2017年4月28日金曜日

白い炎

   白い炎

風は強く
泥濘(どぶ)川に薄氷浮き
十三年春の天球は 火を噴いて
高い巻雲(シーラス)のへりに光つてゐる。
枯れみだれた葦の穂波
ごうごうと鳴りひびく一眸の原。
セメント
鉄鋼
電気
マグネシウムら
寂莫として地平にゐならび
蒼天下
終日人影(じんえい)なし。


「十三年」すなわち昭和13年春ころ、どういう出来事があったのか、ざっと並べてみました。
・2月1日 山川均、大内兵衛、美濃部亮吉ら労農派教授グループ30人ほどが検挙(第二次人民戦線事件)
・2月18日 石川達三の南京従軍記『生きてゐる兵隊』を掲載した『中央公論』(3月号)が発禁処分。石川と編集者らが検挙される
・3月2日 ブハーリンら21人名を被告とした第3次モスクワ裁判はじまる(右翼トロツキスト陰謀事件)
・3月13日 ナチス・ドイツ、オーストリアを併合
・4月1日 国家総動員法公布
・4月21日 大阪市営地下鉄御堂筋線の難波駅 - 天王寺駅間が開業
・5月5日 国家総動員法施行

*一転して文語調である。「早春」の多元的で能動的結句に比べると平板な印象はまぬがれない。それにしても「セメント」「鉄鋼」「電気」「マグネシユム」などの語いはまことに印象的といえる。

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