2017年4月7日金曜日

或恐怖

   或恐怖

いくらゐつてもゐつても赤い蘆である
こんな路をゆくのはよくない
陽も落ちさうで弱りました
こんな路をゆくのはよくない
陽も赤けりや路も赤い
ぼくの背中はむづがゆい
みんなが熱病のやうに赤い
頭脳も赤い
頭脳も赤い
呼吸も赤い
嫌な赤さだ
赤いものは赤い
赤いものは赤い
笑つても赤い
こんな路をゆくのはよくない
赤けりや赤くなれ
赤けりや赤くなれ


イネ科の大形多年草の「蘆」は、アシともヨシとも読みます。アシという名は「悪し」に通じるので、その対語として「善し」となったといわれます。この作品のトーンからすると「アシ」のほうがいいかもしれません。

稈は直立し高さ1~3メートル、葉は下垂し、大形で長披針形、長さ約50センチメートル。世界の暖帯から亜寒帯にかけて分布、日本では全土の水辺に群生します。

若芽は食用され、稈は「よしず」をつくります。記紀など日本神話で「葦原の中つ国」が日本の呼称として用いられました。『万葉集』では難波の景物として知られています。

「赤い」ことの形容に、腸チフス、肺炎、発疹チフス、天然痘など高熱のでる病気の総称である「熱病」のやうに、という比喩を用いています。

*「ぼく」は赤い蘆にとりかこまれて、なにもかもが熱病のように赤い。赤い蘆に集約される青春特有の情熱と恐怖が生々しい現実感を与えている。《安》

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