2017年5月24日水曜日

重工業抄

   重工業抄

生国不詳
昨日私はここに来たやうでもあるし
何十年も昔からここにゐるやうな気もする。
年齢だつてさだかではない。
まだ若いといふ人もゐるが
記憶は朦朧としてゐる。
ただ前方に枯れた葦原があり
背後に暗い大きな海があつた。
葦原には鳥たちも啼いてゐた。
ところどころに家らしいものも建つてゐたが寥しかつた。
無人の野に一列の電柱がはしつてゐた。
その頃だらう。一粒の種子が
この荒漠たる岸に流れついた。
そして孤独にこの国の草の根のからんだ柔かい土から萌え出た。
それは昨日のやうでもあるし
何十年も前の出来事のやうでもある。
昔、海だつたあたりも
いつしかこんなに遠く海からはなれてしまつた。
葦原のまん中だと思つてゐたが
どうしていまは仲間が増えてこの通りだ。
かつてこの国の岸が私にとつてさうであつたやうに
人々はまだ私になじまない。
ひよつとするとこの国の人は私たちが嫌ひなのかも知れない。
私たちはほんとうにこの国が好きなのに。
こんなに居心地のよい土地はいま世界の何処にあるだらう。
私たちはやうやく
この国の自然の中に自生して
生国不詳の悲しさを
忘れてゐる。


「重工業」は、産業構造をとらえる際の概念の一つ。常識的には製造工業を中心に近代工業を2つに大別して、軽工業と重工業としてとらえるところから出発していますが、産業の実体の発展や経済理論の進歩につれてその定義はかなり変化しています。

通常、重工業という場合は、金属、機械、化学の三大工業部門を中心に資本財生産、投資財生産、あるいは生産財生産に重点をおいた工業領域をさしますが、実際的な用語法ではさらに厳密に「厳格に用いる場合は鉄鋼および石炭工業に限られる」とする見解もあります。

鉄鋼、金属工業などに機械工業を加えたものを重工業とし、これに化学工業を加えて重化学工業と呼びならわす用語法もあります。この場合は重工業の領域としては鉄鋼1次製品、鋳鍛鋼、圧延鋼材、金属2次製品、非鉄金属、産業用一般機械、精密機械、産業用電気機械、民生用軽電機械、自動車、船舶、車両などを中心としています。

このような重工業ないし重化学工業という概念で産業をとらえるのは、経済発展と産業構造の関係を理論的、政策的に的確に追究するねらいの場合が多いものの、国によりまた発展段階によって実情が異なるので、過度に厳密に理解したり固定的に考察することはできません。

*「人々が私になじまない」ということはどういうことか。そして、「こんなに居心地がよい土地は他にない」というのはどういうことか。擬人法によって滑らかに重工業に語らせつつも、重工業を見る小野の眼はあきらかに複眼的である。《安》

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