2017年6月13日火曜日

夜の葦

   夜の葦

闇の奥から
疾走する前燈の中に
夜の葦が飛びこんでくる。
ネガに浮き出されたやうな真白い葦が
軌道の両側にながれて
殺到してくる。


「ネガに浮き出されたやうな真白い葦が/軌道の両側にながれて/殺到してくる。」と、「軌道」という表現を使っているところからすると、詩人は夜、列車から眺めている葦の風景のようです。

「軌道」はふつう、鉄道車両の走行を誘導するレール(軌条)、レールの間隔を一定に保つ枕木、それらを支え道床などから構成されます。法律上の軌道は、軌道法(1921年)と旧内務省の軌道法施行規則によって敷設された線路を指します。

「ネガ」=写真、wiki=は、ネガティブ”の略で、陰画とも言います。いまはすっかりデジタルになってしまいましたが、被写体の明暗が反転して再現されたフィルムのことをいいます。プリントする段階で反転し、通常の色調・階調の写真にします。

モノクロ(白黒)ネガとカラーネガがありますが、時代からすると黒白写真が想定されます。ネガフィルムで写真を撮影して現像すると、被写体の明暗と逆の明暗の画像が得られます。「疾走する前燈」に照らし出されて、ふつうならうっそうと黒く群れる葦が、ネガを見ているように「真白」く「殺到して」眼に飛び込んでくるというわけです。

*(この詩も)小野の「風景の大荒廃の中絶」に与えられた新しい表現であろう。……一瞬殺到する白い葦を受けとめる眼でもある。《安》

0 件のコメント:

コメントを投稿