2017年6月16日金曜日

吉野の羊歯

   吉野の羊歯

街に
蕨を売つてゐた。
そのじくときたらおどろくほど太くたくましい。
いかにもこいつは昨日まで
人跡未踏の大山中にのびてゐたといふ感じがする。
束にして積んであつた。


「蕨」(ワラビ)は、植物学的にはイノモトソウ科の夏緑性シダをいうようですが、「羊歯」(シダ)の若芽を「わらび巻き」というように、日本ではワラビはシダの代名詞とされることもあります。ワラビは各地にもっとも普通にみられ、全世界に広く分布する汎分布種の一つです。中国語の「蕨」はシダを意味し、逆に英語のfern(シダ)が詩などに用いられるときは、普通、ワラビをさします。

コケ植物の後にあらわれた、ワラビやゼンマイなどシダ植物は、陸上で最初に栄えた植物といってもいいかもしれません。ざっと3億年前のことです。まだ、種子がなく、無性生殖の胞子で増えます。地球の歴史のうえでの存在感からしても「おどろくほど太くたくまし」く、「人跡未踏の大山中にのびてゐたといふ感じ」を有しているのです。

*おどろくほど太くたくましいものを運んできて積んだ人間の臭いを感じる。《安》

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