2017年6月17日土曜日

日本海

   日本海

海を見たい。
八月の日本海を見たい。
そして暗い水平線の向ふの
ダフリヤカラマツやグイ松の森林を見たい。
晴れた日の蜃気のやうに
北の 東の
さらさらにその向ふの
荒漠たる奥地の世界に動いてゐる
倒木機やブルドーザーを見たい。
マシンツールのきらめく反射を浴びたい。
わが港湾から姿を消した
俺の妖精は(秘密だが)
たしかにそのあたりにゐるのだ。
かつて市振の海岸から見た
日本海の白波をおもふ。
灰緑色の大波浪をおもふ。
根焼けしてゐる海藻や
膠のやうに熔けてゐる珪藻類を想像する。
カラヌスといふ
美しい紅色のプランクトンが繁殖するのもいまごろだ。
も一度あの海を見たい。
日本海。


「ダフリヤカラマツ」は、北緯72度30分に及ぶ世界一北に分布するカラマツで、ダフリヤはバイカル湖の東からアムール川流域の西部までの地域の古称に由来しているそうです。厳しい気候に耐える樹木で、樹高30 m、幹径80 cmに達しますが、森林限界付近では樹高は低く、ハイマツのような姿をとります。

樹皮は赤みを帯びているかまたは淡褐色で、分厚く、古株の幹の下部には亀裂が走ります。針葉は明緑色で長さ15〜30 mm、球果は15〜30 mmの楕円形。「グイマツ」は、千島列島と樺太に分布するダフリヤカラマツの変種です。。

「市振(いちぶり)」というとやはり、芭蕉の「奥の細道」にある「一つ家に遊女も寝たり萩と月」という艶な句が思い出されます。越後と越中の国境にあり、その名のとおり越後の第一番の「振りだし」です。

市振はむかし、旧北陸道の難所「親不知・子不知」の西にあたる宿場町として賑わいました。市振海岸は、白亜紀の火山岩でできた山が海岸線までせまります。海岸は砂利浜で、水磨された岩石組織が美しい礫で埋め尽くされ、ヒスイを観察することもできます。

*小野の「夢」が、「中絶」のあと、また新たに躍動しようとしている。巻末に置かれたこの詩の調子は、小野自身を内部からふるいたたせるためのものではなかったか。《安》

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