2017年6月18日日曜日

   道

道はひろく
地平につづいていた。
何かしらおそろしく重量あるものが
海へ向つたか海からきたかだ。

あの日は過ぎた。
割れた空から
淡いセピヤ色の照明がまつすぐに降りてゐる。
つけつ放し。天にはだれもいない。


きょうから第6詩集『抒情詩集』に入ります。昭和22年6月1日に爐書房(奈良)から発行されました。

扉に『詩論』211の「私が心に想像する詩の韻律は、詩をつねに『音楽』の状態と結びつけて思考する習慣から解放されていないものには感知することは出来ない。同時に、私の詩の読者が、私の書く詩の中に『音楽』を感じ、或は発見したとしてもそれを私は阻止することは出来ない」が載っています。

「セピヤ(セピア、sepia)色」は、JISの色彩規格では「ごく暗い赤みの黄」としされています。もともとギリシア語で頭足類のイカのことで、ふつうイカの墨から作られる絵の具の濃い茶色をさします。

イカの内臓分泌腺のなかで作られる黒褐色の分泌物(イカ墨)を乾燥させて、古くから顔料として使われてきました。現代では人工的に作られますが、モノクロの古い写真が色あせて茶色っぽくなったことから、郷愁をさそう古い情景や事柄を「セピア色の**」などといいます。

*淡いセピア色の照明がつけっ放しだというイメージは悲しいまでに見事に「あの日」以後の現実と小野の気持とを照らしている。この詩集の序詩とみていいだろう。《安》

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