2017年7月6日木曜日

播州平野

   播州平野

その野は
いつまでもいつまでも
窓の外につづいた
海のようだつた。
近く遠くところどころに
誘蛾燈が光つていた。またたきもなく。
あゝそれらの誘蛾燈の
鮮烈な一つの灯と灯のあいだは
なんと大きな暗い空間だつたろう。
かゝる美麗なる暗黒を
はじめて見た。


「播州平野」は、兵庫県南西部、瀬戸内海の播磨灘(なだ)に面する平野で、播州平野、姫路平野ともいわれます。東西約55km、南北約10~20km。海岸部は複合三角州を形成。沿岸部は江戸時代には一面、塩田地帯で、現在は沿岸の埋め立て地に金属・鉄鋼・化学などの近代工場群が立地し、阪神工業地帯に連続する工業地帯として発展しています。東部の加古川中・下流域は酒造用米で知られる県第1の穀倉地帯でしたが、近年は宅地化が著しくなっています。

「誘蛾燈」=写真=は、昆虫の走光性を利用して、害虫を誘い、殺滅する蛍光灯、ブラックライト、高圧水銀灯などの照明装置をいいます。昔は光源に石油ランプ、アセチレン、60W電球などを用いられました。光に集まる害虫を、水面に油滴、中性洗剤を落とした水盤に落下溺死させたり、殺虫剤を入れた箱、袋に集めて死亡させます。

主にイネのメイガ類、ダイズのコガネムシ、果樹のシンクイガ、ハマキガの幼虫の捕殺に使用されました。昭和の初期から第2次世界大戦直後にかけて、鏑木外岐雄らが、ニカメイガが330~440nmの紫外線によく誘引されることを明らかにし、同範囲の光を効率よく出す青色蛍光灯を開発しました。

*「かゝる美麗なる暗黒」といってもそれがいかなる暗黒であるかは明白ではない。ただこの10行ばかりをていねいに読み進むとき、鮮烈な灯、灯と灯とのあいだの大きな暗い空間に向きあっている人間の存在のあり方が浮かびあがってくる。「美麗なる」とは暗黒の形容ではない。暗黒に向きあっている人間の感動のあり方を示している。この詩もまた戦争を抜きにしては正しく捕えられないだろう。《安》

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