2017年8月8日火曜日

とほうもないねがい

   とほうもないねがい

あれがほしい
あれが
あれつてなんじやい
あれだよ あれだよ 見えつだろ
すすき 尾花は陽に透けて
お山はくつきり晴れている
それがどうした わかんねえ
他になんにも見えないが。
お母ァにあれが見えぬとは
おいらの村の岩蔵が 三等陸士の星つけて
バズーカ砲をかついでらあ
すすき尾花の丘の上
白りんどうも咲いている。
それは見えるが なんなんじや
あれだよあれだよ岩蔵が
肩にかついだバズーカ砲
あいつを一ちようもらいてえ
なにをいうぞよ おとろしい
なあに わけはないことさ
操縦法はかんたんよ
おれとお母ァが一組で
細身の弾をこう持つて
筒の先からすべらせる
ただそうれだけよ かんたんだ。
すすき 尾花のたんぽ道
バズーカ砲で雀追い
ほしいな ほしいな 岩蔵よ
そいつをちよつくら持つてきな
ついでに戦車とゆくめえが
あれをたたんで
おだちんに
おいらの村に
持ちかえれ。


「バズーカ砲」=写真、wiki=は、対戦車攻撃のため第二次世界大戦中にアメリカで開発されたロケット弾発射機。軽量簡単な滑腔砲身の発射筒で、砲身の先端がらっぱ状に広くなり、これが当時の喜劇俳優ボブ・バーンズ愛用のらっぱ「バズーカ」に似ていたことにちなんで名づけられたそうです。兵士1人が肩に担いで照準・発射し、ほかの1人が弾薬を後方から装填します。

砲身は軽金属製の円筒で、簡単な照準具と発電機、引き金が装置され、弾丸は成形炸薬・弾頭着火の弾底信管のほか、推進用火薬を内蔵し、この推力によって飛行します。弾丸が命中すると成形炸薬のノイマン効果で発生した数千度以上のジェットで戦車の装甲を溶融し、内部の兵員・機材を殺傷破壊します。

陸上自衛隊装備のバズーカ砲は、89ミリロケット発射筒で、全長1535ミリメートル、重量6.8キログラム、電気発火方式、発射速度は毎分8発(最大)、弾丸初速は102メートル/秒、最大有効射程600メートル、弾丸重量は3.3キログラム、とされています。

*自衛隊のバズーカ砲を村に持ってかえって雀追いをしようというこの作品もまた小野のいう「武器コンプレックス」から出た発想である。「わけはないことさ」「ただそれだけよ かんたんだ」と「とほうもない」「おとろしい」という相反する二つの言葉のあいだで、だからこそ「所詮は虚構か悪夢の世界の出来事」であっても「なかなか意味がある」のだ。《安》

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